ソースは料理に味・食感・見た目を加えるもので、ふつうはそれだけで食べることはない。世界最古級のソースは、どれも塩と発酵から生まれた。地中海では魚を塩漬けにしてガルムを作り、中国では大豆を発酵させて醤を作った。やがてフランスではルーでとろみをつけるソースが体系化され、アメリカ大陸の唐辛子とトマトが世界中のソースを塗り替えた。ここでは、ソースの歴史を時代順にたどったあと、世界を8つの地域に分けて、それぞれの土地を代表するソースを見ていく。

歴史と伝播

紀元前4〜3世紀

古代ギリシャの魚醤とローマのガルム

記録に残る最古の魚醤は、紀元前4〜3世紀に古代ギリシャ人が魚のくずを発酵させた garos だ。ローマ人はこれを受け継いで garum(リクアメン)と呼んだ。プリニウスは、魚の内臓を塩漬けにしてできた液体だと書き残している。ローマ帝国のスペインではおもにサバから大量に作られ、アルヘシラスなどには当時の塩漬け工場の遺構が残っている。

周代〜宋代

中国の醤と醤油の誕生

周代の中国では、魚を大豆と塩で発酵させた調味料が使われていた。漢代になると、魚を使わずに大豆だけを発酵させた醤(ジャン)と、その副産物の醤油が生まれ、魚の発酵調味料は魚醤として別の道を歩んだ。紀元40年には前身の「清醤」が記録され、宋代(960〜1279年)には「醤油」の名が定着した。

17世紀

トマトがヨーロッパのソースになる

アメリカ大陸原産のトマトは、1692年にナポリで出版されたアントニオ・ラティーニの料理書で、初めてイタリア料理のソースとして登場した。ラティーニはスペイン副王に仕える料理人で、レシピは「スペイン風」と名づけられていた。トマトソースをパスタと合わせた最初の記録は、1790年のフランチェスコ・レオナルディの料理書だ。

18〜19世紀

瓶詰めソースの時代

マヨネーズは、1756年にリシュリュー公がメノルカ島のマオンを攻略した際に持ち帰ったという説がある。1812年にはアメリカでジェームズ・ミースが最初のトマトケチャップのレシピを発表した。1837年には、イギリス・ウスターの薬剤師リーとペリンがウスターソースを商品化した。17世紀末にイギリスで英語に入った ketchup という言葉は、この時代にトマトの調味料の名前に変わっていった。

1833〜1903年

カレームとエスコフィエの「母なるソース」

1833年、マリー=アントワーヌ・カレームはエスパニョール・ヴルーテ・アルマンド・ベシャメルの4つを「グランド・ソース」に分類した。1903年にはオーギュスト・エスコフィエが『料理の手引き』でエスパニョール・ヴルーテ・ベシャメル・トマトを基本ソースに挙げた。マヨネーズは冷たいソースの母とされた。1907年の英語版でマヨネーズの記述がオランデーズに置き換えられたことが、現在よく知られる「五大ソース」の由来と考えられている。

明治〜1964年

日本でソースが作り変えられる

日本では明治期にウスターソースが国産化され、1908年にはカゴメソースも誕生した。明治後期には全国にソース製造業が広がった。当初はさらっとしたウスタータイプだけだったが、1948年に神戸の道満調味料研究所(現オリバーソース)がとろみのある濃厚ソース(とんかつソース)を開発し、1964年にはキッコーマンが中濃ソースを発売した。

フランス——ソースを「体系」にした国

フランス料理のソースは中世から数百種が作られ、19世紀末から1980年代のヌーヴェル・キュイジーヌ登場まで、ソースこそがフランス料理の最大の特徴とされた。カレームとエスコフィエが「母なるソース」として分類したことで、無数のソースが少数の基本形からの派生として整理された。

ベシャメル

ベシャメルソース

主材料
バター・小麦粉・牛乳
使い方
グラタン、ラザニア、クロックムッシュ

他との違い

核
ルー(バターと小麦粉)を牛乳でのばす白い母なるソース。カレームの4大ソースにもエスコフィエの基本ソースにも入る
他との差
チーズを加えるとモルネー、トマトを加えるとオーロラ。日本では「ホワイトソース」として洋食に定着した
ヴルーテ

ヴルーテ

主材料
ブロンドルー・白いフォン
使い方
鶏・魚・仔牛料理

他との違い

核
牛乳の代わりに鶏・魚・仔牛の白い出汁でルーをのばす。使う出汁で名前が変わる
他との差
ベシャメルと同じルーの技法だが、乳ではなく出汁の旨みが主役
デミグラス

デミグラスソース

主材料
エスパニョール・フォン・ド・ヴォー
使い方
肉料理、日本ではハンバーグやオムライス

他との違い

核
褐色の母なるソース「エスパニョール」をさらに煮詰めた複合ソース
他との差
フランスでは基礎素材、日本の洋食では看板の味として独自に発展した
マヨネーズ

マヨネーズ

主材料
卵黄・油・酢
使い方
冷製料理、サラダ、揚げ物

他との違い

核
エスコフィエが冷たいソースの母と位置づけた乳化ソース。1756年のメノルカ島マオン攻略に由来するという説がある
他との差
加熱しない乳化で作るため、ルー系の母なるソースとは系統が異なる。タルタルソースの土台にもなる

地中海・南ヨーロッパ——すり潰す・煮詰める

古代ギリシャ・ローマの魚醤ガルムが生まれた地域。現代の地中海のソースは、乳鉢ですり潰すハーブやにんにくのソースと、新大陸から伝わったトマトを煮詰めるソースが二本柱になっている。

トマトソース

トマトソース

主材料
トマト・オリーブオイル・にんにく
使い方
パスタ、ピッツァ、煮込み

他との違い

核
イタリア料理での初出は1692年ナポリのアントニオ・ラティーニの料理書で、「スペイン風」のレシピとして登場した
他との差
パスタと合わせた最古の記録は1790年。マリナーラやアマトリチャーナなどはこのソースから枝分かれした
ペスト

ペスト

主材料
バジル・松の実・にんにく・チーズ・オリーブオイル
使い方
パスタ、スープ

他との違い

核
材料をすり潰して作るジェノバ発祥の緑のソース
他との差
加熱しないため、ハーブの香りがそのまま残る
アイオリ

アイオリ

主材料
にんにく・オリーブオイル(卵黄)
使い方
魚介、野菜、スープ

他との違い

核
プロヴァンス語の ail(にんにく)+ oli(油)が語源。本来は卵を使わない乳化ソース
他との差
マヨネーズのルーツとする説もあるメノルカ島のソースと近い系統
ツァジキ

ザジキ

主材料
水切りヨーグルト・きゅうり・にんにく
使い方
スブラキ、ピタパン

他との違い

核
ギリシャのヨーグルトソース。トルコではジャジュクと呼ばれる
他との差
乳酸発酵の酸味が主役。バルカン半島からコーカサス、中央アジアまで分布する

イギリスとその周辺——ローストと卓上ソース

ローストに添えるソースと、瓶詰めの卓上ソースの二系統が発達した。17世紀のイギリスにはすでに、アンチョビをほかの材料と合わせた魚用ソースのレシピがあった。

ウスターソース

ウスターソース

主材料
酢・糖蜜・アンチョビ・タマリンド・香辛料
使い方
肉料理、カクテル、日本では揚げ物

他との違い

核
1837年にウスターの薬剤師リーとペリンが商品化し、ウスターの名を冠した最初のソースになった
他との差
古代の魚醤の系譜を引く発酵ソース。明治の日本に渡り、中濃ソースや濃厚ソースへと分化した
グレイビー

グレイビー

主材料
肉の焼き汁・小麦粉
使い方
ロースト、マッシュポテト

他との違い

核
ローストした肉の焼き汁にとろみをつけた褐色のソース
他との差
料理ごとにその場で作るソースで、瓶詰めの卓上ソースとは対照的
ブレッドソース

ブレッドソース

主材料
牛乳・パン粉・クローブ・玉ねぎ
使い方
ローストチキン、七面鳥

他との違い

核
牛乳をパン粉でとろみづけした、中世から続く古いタイプのソース
他との差
小麦粉のルーが普及する前の、パンでとろみをつける技法が残っている

アプフェルクレン

主材料
ホースラディッシュ・りんご・生クリーム
使い方
ターフェルシュピッツ、燻製魚

他との違い

核
オーストリアと南ドイツの冷製ソース
他との差
ゆで肉に添える点はブレッドソースと同じだが、辛味と果実の酸味で肉をさっぱりさせる

東アジア——穀物と大豆の発酵

周代には魚を大豆と塩で発酵させた調味料が使われていた。漢代になると魚を使わない大豆の醤(ジャン)が生まれ、魚醤は別の道をたどった。東アジアのソースの多くは、この「醤」の子孫にあたる。

醤油

醤油

主材料
大豆・小麦・塩
使い方
あらゆる和食・中華料理

他との違い

核
前漢の大豆の醤とほぼ同じくらい古い。紀元40年に前身の「清醤」が記録され、宋代に「醤油」の名が定着した
他との差
発酵ペーストの醤から液体を分けたもの。日本の照り焼きのたれやインドネシアのケチャップマニスもこの系統
豆板醤

豆板醤

主材料
そら豆・唐辛子・塩
使い方
麻婆豆腐、回鍋肉

他との違い

核
四川の発酵辛味調味料。数か月から数年熟成させる
他との差
醤の発酵技術に、新大陸から伝わった唐辛子を組み合わせた
コチュジャン

コチュジャン

主材料
唐辛子粉・米麹・もち米
使い方
ビビンバ、トッポッキ

他との違い

核
韓国の発酵唐辛子味噌
他との差
米を使うため豆板醤より甘みがある
オイスターソース

オイスターソース

主材料
牡蠣エキス・砂糖
使い方
炒め物、煮物

他との違い

核
1870年代の広東省で、牡蠣の煮汁を煮詰めて偶然生まれたとされる
他との差
魚介を使う点は魚醤と同じだが、発酵させずに煮詰めて作る

東南アジア——魚醤と唐辛子

中国福建語で魚醤を意味する言葉はマレー語の kecap(醤油)として残り、英語の ketchup の語源とも考えられている。魚醤と、16世紀以降に伝わった唐辛子が、この地域のソースの土台になっている。

ナンプラー

ナンプラー

主材料
カタクチイワシ・塩
使い方
炒め物、スープ、タレ

他との違い

核
小魚を塩漬けにして長期発酵させたタイの魚醤
他との差
古代ローマのガルムと製法が近い。ベトナムのニョクマムも同じ系統
サンバル

サンバル

主材料
唐辛子・塩・香味野菜
使い方
ご飯、揚げ物、麺

他との違い

核
インドネシア・マレーシアの唐辛子調味料。唐辛子が伝わる前は長胡椒で辛味を出していた
他との差
インドネシアだけで200種以上あり、生で使うものと炒めるものに大きく分かれる
ケチャップマニス

ケチャップマニス

主材料
醤油・椰子砂糖
使い方
サテ、ナシゴレン

他との違い

核
ジャワ発祥の甘い醤油。インドネシアの醤油生産の約9割を占める
他との差
名前の kecap は ketchup と同じ語源。中身は大豆の醤油で、トマトは使わない
スリラチャ

シラチャーソース

主材料
唐辛子・酢・にんにく・砂糖
使い方
麺、卵料理、ハンバーガー

他との違い

核
タイの町シーラーチャーの名を持つホットソース
他との差
アメリカでは鶏のロゴのボトルの製品が有名

南アジア・中東・北アフリカ——スパイスとヨーグルト

ソースは料理にかけるものというより、食卓に並べる薬味として使われることが多い。スパイスを効かせた辛い料理に、ヨーグルトやごまの冷たいソースを添えて味を和らげる組み合わせが多い。

チャツネ

チャツネ

主材料
果物・野菜・スパイス・酢
使い方
カレー、サモサ

他との違い

核
南アジアの甘酸っぱい調味料。生のタイプと煮込んで保存するタイプがある
他との差
マンゴーやタマリンドのチャツネが代表的で、カレーやサモサに添えられる
ライタ

ライタ

主材料
ヨーグルト・きゅうり・ミント
使い方
カレー、ビリヤニ

他との違い

核
辛い料理の口直しに添えるインドのヨーグルトソース
他との差
ギリシャのザジキと同じヨーグルト系だが、クミンなどスパイスを加える
ハリッサ

ハリッサ

主材料
唐辛子・コリアンダー・クミン・にんにく
使い方
クスクス、タジン

他との違い

核
チュニジア発祥の辛いペースト
他との差
唐辛子をペーストにして料理に溶かして使う。北アフリカ全域に広まっている
タヒニ

タヒーニ

主材料
炒った白ごま
使い方
フムス、ファラフェル

他との違い

核
白ごまをすり潰した中東のペースト
他との差
レモン汁とにんにくでのばしてソースにする。日本の練りごまと近い

アメリカ大陸——唐辛子・トマト・チョコレートの原産地

唐辛子・トマト・アボカド・カカオはいずれもアメリカ大陸の原産で、世界中のソースを変えた食材のふるさとでもある。スペイン語で salsa(ソース)と呼ばれる多様なソースがある。

モーレ

モーレ

主材料
唐辛子・ナッツ・スパイス・チョコレート
使い方
七面鳥・鶏肉、エンチラーダ

他との違い

核
ナワトル語の mōlli(すり潰したもの・ソース)が語源。プエブラ州とオアハカ州が発祥地を主張している
他との差
先住民の食材とヨーロッパの香辛料が混ざり合った、メキシコの混血文化を象徴するソース
サルサソース

サルサソース

主材料
トマト・唐辛子・玉ねぎ・コリアンダー
使い方
タコス、スープ

他との違い

核
メキシコの卓上ソースの総称。生のサルサ・フレスカから加熱したサルサ・ロハまである
他との差
唐辛子とトマトという原産地の素材をそのまま使う
ワカモレ

ワカモレ

主材料
アボカド・ライム・玉ねぎ
使い方
トルティーヤチップス

他との違い

核
アボカドを潰したディップ。語尾の mole はモーレと同じ語源
他との差
辛くない、クリーミーなメキシコのソース
チミチュリ

チミチュリ

主材料
パセリ・にんにく・オレガノ・ビネガー
使い方
アサード(焼いた牛肉)

他との違い

核
アルゼンチン・ウルグアイのハーブソース
他との差
焼いた牛肉に添える緑のソース。語源にはバスク語説などがある
ケチャップ

ケチャップ

主材料
トマト・酢・砂糖
使い方
ハンバーガー、フライドポテト

他との違い

核
1812年にジェームズ・ミースが最初のトマトケチャップのレシピを発表した
他との差
もとはアジアの魚醤の名前だった言葉が、アメリカでトマトの調味料の名前になった

日本——輸入ソースを作り変える

明治期にウスターソースが国産化され、明治後期には全国にソースメーカーが生まれた。初期の国産ソースはさらっとしたウスタータイプだけだったが、戦後になって粘度の違うソースが次々と生まれた。

濃厚ソース

濃厚ソース

主材料
果実・野菜・酢・でん粉
使い方
とんかつ、お好み焼き

他との違い

核
1948年に神戸の道満調味料研究所(現オリバーソース)が開発した
他との差
JAS規格で粘度2.0Pa・s以上。衣の上に留まるとろみが特徴

中濃ソース

主材料
野菜・果実・酢・香辛料
使い方
コロッケ、フライ全般

他との違い

核
1964年にキッコーマンが発売したものが最初の、ウスターと濃厚の中間のソース
他との差
JAS規格で粘度0.2〜2.0Pa・s未満。関東の食卓で定番になった
照り焼きソース

照り焼きソース

主材料
醤油・みりん・砂糖
使い方
ブリ、鶏肉、ハンバーグ

他との違い

核
醤油ベースの甘辛いたれで、焼いた食材に照り(つや)を出す
他との差
アメリカ・シアトル周辺では teriyaki という名前のファストフードとして広まった
タルタルソース

タルタルソース

主材料
マヨネーズ・ピクルス・ゆで卵
使い方
エビフライ、チキン南蛮

他との違い

核
マヨネーズにピクルスやケッパーを混ぜたフランス起源の冷製ソース
他との差
日本ではゆで卵をたっぷり入れ、揚げ物に添える定番になった

比較まとめ

ベシャメルソースフランス主材料: バター・小麦粉・牛乳使い方: グラタン、ラザニア、クロックムッシュ核: ルー(バターと小麦粉)を牛乳でのばす白い母なるソース。カレームの4大ソースにもエスコフィエの基本ソースにも入る
ヴルーテフランス主材料: ブロンドルー・白いフォン使い方: 鶏・魚・仔牛料理核: 牛乳の代わりに鶏・魚・仔牛の白い出汁でルーをのばす。使う出汁で名前が変わる
デミグラスソースフランス主材料: エスパニョール・フォン・ド・ヴォー使い方: 肉料理、日本ではハンバーグやオムライス核: 褐色の母なるソース「エスパニョール」をさらに煮詰めた複合ソース
マヨネーズフランス主材料: 卵黄・油・酢使い方: 冷製料理、サラダ、揚げ物核: エスコフィエが冷たいソースの母と位置づけた乳化ソース。1756年のメノルカ島マオン攻略に由来するという説がある
トマトソース地中海・南ヨーロッパ主材料: トマト・オリーブオイル・にんにく使い方: パスタ、ピッツァ、煮込み核: イタリア料理での初出は1692年ナポリのアントニオ・ラティーニの料理書で、「スペイン風」のレシピとして登場した
ペスト地中海・南ヨーロッパ主材料: バジル・松の実・にんにく・チーズ・オリーブオイル使い方: パスタ、スープ核: 材料をすり潰して作るジェノバ発祥の緑のソース
アイオリ地中海・南ヨーロッパ主材料: にんにく・オリーブオイル(卵黄)使い方: 魚介、野菜、スープ核: プロヴァンス語の ail(にんにく)+ oli(油)が語源。本来は卵を使わない乳化ソース
ザジキ地中海・南ヨーロッパ主材料: 水切りヨーグルト・きゅうり・にんにく使い方: スブラキ、ピタパン核: ギリシャのヨーグルトソース。トルコではジャジュクと呼ばれる
ウスターソースイギリスとその周辺主材料: 酢・糖蜜・アンチョビ・タマリンド・香辛料使い方: 肉料理、カクテル、日本では揚げ物核: 1837年にウスターの薬剤師リーとペリンが商品化し、ウスターの名を冠した最初のソースになった
グレイビーイギリスとその周辺主材料: 肉の焼き汁・小麦粉使い方: ロースト、マッシュポテト核: ローストした肉の焼き汁にとろみをつけた褐色のソース
ブレッドソースイギリスとその周辺主材料: 牛乳・パン粉・クローブ・玉ねぎ使い方: ローストチキン、七面鳥核: 牛乳をパン粉でとろみづけした、中世から続く古いタイプのソース
アプフェルクレンイギリスとその周辺主材料: ホースラディッシュ・りんご・生クリーム使い方: ターフェルシュピッツ、燻製魚核: オーストリアと南ドイツの冷製ソース
醤油東アジア主材料: 大豆・小麦・塩使い方: あらゆる和食・中華料理核: 前漢の大豆の醤とほぼ同じくらい古い。紀元40年に前身の「清醤」が記録され、宋代に「醤油」の名が定着した
豆板醤東アジア主材料: そら豆・唐辛子・塩使い方: 麻婆豆腐、回鍋肉核: 四川の発酵辛味調味料。数か月から数年熟成させる
コチュジャン東アジア主材料: 唐辛子粉・米麹・もち米使い方: ビビンバ、トッポッキ核: 韓国の発酵唐辛子味噌
オイスターソース東アジア主材料: 牡蠣エキス・砂糖使い方: 炒め物、煮物核: 1870年代の広東省で、牡蠣の煮汁を煮詰めて偶然生まれたとされる
ナンプラー東南アジア主材料: カタクチイワシ・塩使い方: 炒め物、スープ、タレ核: 小魚を塩漬けにして長期発酵させたタイの魚醤
サンバル東南アジア主材料: 唐辛子・塩・香味野菜使い方: ご飯、揚げ物、麺核: インドネシア・マレーシアの唐辛子調味料。唐辛子が伝わる前は長胡椒で辛味を出していた
ケチャップマニス東南アジア主材料: 醤油・椰子砂糖使い方: サテ、ナシゴレン核: ジャワ発祥の甘い醤油。インドネシアの醤油生産の約9割を占める
シラチャーソース東南アジア主材料: 唐辛子・酢・にんにく・砂糖使い方: 麺、卵料理、ハンバーガー核: タイの町シーラーチャーの名を持つホットソース
チャツネ南アジア・中東・北アフリカ主材料: 果物・野菜・スパイス・酢使い方: カレー、サモサ核: 南アジアの甘酸っぱい調味料。生のタイプと煮込んで保存するタイプがある
ライタ南アジア・中東・北アフリカ主材料: ヨーグルト・きゅうり・ミント使い方: カレー、ビリヤニ核: 辛い料理の口直しに添えるインドのヨーグルトソース
ハリッサ南アジア・中東・北アフリカ主材料: 唐辛子・コリアンダー・クミン・にんにく使い方: クスクス、タジン核: チュニジア発祥の辛いペースト
タヒーニ南アジア・中東・北アフリカ主材料: 炒った白ごま使い方: フムス、ファラフェル核: 白ごまをすり潰した中東のペースト
モーレアメリカ大陸主材料: 唐辛子・ナッツ・スパイス・チョコレート使い方: 七面鳥・鶏肉、エンチラーダ核: ナワトル語の mōlli(すり潰したもの・ソース)が語源。プエブラ州とオアハカ州が発祥地を主張している
サルサソースアメリカ大陸主材料: トマト・唐辛子・玉ねぎ・コリアンダー使い方: タコス、スープ核: メキシコの卓上ソースの総称。生のサルサ・フレスカから加熱したサルサ・ロハまである
ワカモレアメリカ大陸主材料: アボカド・ライム・玉ねぎ使い方: トルティーヤチップス核: アボカドを潰したディップ。語尾の mole はモーレと同じ語源
チミチュリアメリカ大陸主材料: パセリ・にんにく・オレガノ・ビネガー使い方: アサード(焼いた牛肉)核: アルゼンチン・ウルグアイのハーブソース
ケチャップアメリカ大陸主材料: トマト・酢・砂糖使い方: ハンバーガー、フライドポテト核: 1812年にジェームズ・ミースが最初のトマトケチャップのレシピを発表した
濃厚ソース日本主材料: 果実・野菜・酢・でん粉使い方: とんかつ、お好み焼き核: 1948年に神戸の道満調味料研究所(現オリバーソース)が開発した
中濃ソース日本主材料: 野菜・果実・酢・香辛料使い方: コロッケ、フライ全般核: 1964年にキッコーマンが発売したものが最初の、ウスターと濃厚の中間のソース
照り焼きソース日本主材料: 醤油・みりん・砂糖使い方: ブリ、鶏肉、ハンバーグ核: 醤油ベースの甘辛いたれで、焼いた食材に照り(つや)を出す
タルタルソース日本主材料: マヨネーズ・ピクルス・ゆで卵使い方: エビフライ、チキン南蛮核: マヨネーズにピクルスやケッパーを混ぜたフランス起源の冷製ソース

ソースは5つの「作り方」に分けられる

世界のソースは材料も名前もさまざまだが、作り方で分けると大きく5つの型に整理できる。同じ型のソースは、地域が離れていても似た役割を果たしている。

  • 発酵(魚醤・醤油・豆板醤)塩と時間で旨みを引き出す、最古の型。ガルムとナンプラー、醤とコチュジャンは同じ発想から生まれた。
  • ルー・とろみ(ベシャメル・ヴルーテ・グレイビー)小麦粉やパンでとろみをつける型。フランスで体系化され、日本では洋食のソースになった。
  • 乳化(マヨネーズ・アイオリ)卵黄やにんにくで油と水を混ぜ合わせる型。タルタルやオーロラソースへと派生する。
  • すり潰し(ペスト・モーレ・タヒーニ)乳鉢や石臼ですり潰す型。モーレの語源 mōlli も「すり潰したもの」を意味する。
  • 煮詰め(トマトソース・ケチャップ・オイスターソース)素材を加熱して濃縮する型。保存しやすいため、瓶詰めの工業製品に向いていた。

ketchup と kecap——ひとつの言葉の旅

中国・福建語で魚醤を意味した言葉は、マレー語の kecap(醤油)として残り、ケチャップマニス(甘い醤油)の名前にもなっている。英語には17世紀末にイギリスで ketchup(1682年)として入り、19世紀のアメリカでトマトの調味料の名前になった。いまでは同じ語源の言葉が、インドネシアでは醤油を、アメリカではトマトソースを指している。

参考資料

  1. Sauce - Wikipedia — ソースの定義、フランス料理のソースの歴史、ラテンアメリカのサルサとモーレ
  2. Garum - Wikipedia — ギリシャ語 garos からの語源、プリニウスの記述
  3. Fish sauce - Wikipedia — 紀元前4〜3世紀ギリシャの魚醤、ローマ帝国スペインのサバのガルム、周代の魚と大豆の発酵、福建語の魚醤とマレー語 kecap
  4. Soy sauce - Wikipedia — 前漢の醤、紀元40年の清醤、宋代の醤油の名称
  5. French mother sauces - Wikipedia — カレーム(1833年)の4大ソース、エスコフィエ(1903年)の分類、1907年英語版での変更
  6. Tomato sauce - Wikipedia — ラティーニ(1692年)、レオナルディ(1790年)
  7. Ketchup - Wikipedia — 1682年の英語での初出、ジェームズ・ミースのトマトケチャップのレシピ(1812年)
  8. Mayonnaise - Wikipedia — 1756年のマオン攻略とリシュリュー公の説
  9. Worcestershire sauce - Wikipedia — 1837年のリー&ペリンによる商品化、17世紀英国のアンチョビソース
  10. ウスターソース - Wikipedia(日本語版) — 明治期の国産化、1908年のカゴメソース、1948年の濃厚ソース、1964年の中濃ソース、JAS粘度区分
  11. Mole (sauce) - Wikipedia — ナワトル語 mōlli の語源、プエブラとオアハカの起源論争
  12. Sweet soy sauce - Wikipedia — ケチャップマニスの起源と生産シェア
  13. Teriyaki - Wikipedia — 醤油・みりん・砂糖のたれ、シアトルのテリヤキ